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貴婦人

月に腰かけ
ワインでも飲んでみたいな、と
貴婦人がため息をつく
お酒なんて飲めないくせに
よく言うよと
隣に座り
ひとりでお猪口をすすると
出来ないことに憧れるのが
貴婦人なんでしょう、と
わたしのつまみを失敬する
トレビア~ン
うなじだけは
貴婦人のたたずまい

それから貴婦人は
スマホの画面を確認し
夫人に戻るわ、と
財布を取りだす
出来ないことだらけだと
彼女は嘆き
何のための
過去だったのと
レシートや
診察券の隙間を探す

改札を抜け
貴婦人はふり返る
次は河原でBBQにしよう、と言う
出来ない約束が
月のまわりに輝いている
急行が
急いで夜を駆けていく

カテキン

壁画を描いた人
蹴鞠を蹴った人も
千利休や
マンモスを仕留めた人たちも
カテキンを知らなかった

わたしは知っている
あなたもきっと

でもその差は
世界を変えない
びっくりするほど
一日は同じ長さ
昼過ぎには
スズメの家族が
地表で追いかけっこをする

風が葉をざわつかせ
知識が舞っていく
カテキンでは絵も描けず
マンモスも殺せず
美味い茶もたてられない

わたしのお茶は
冷めるほど苦くなり
舌を震わせ
飲み干していく

砂時計

一度落ちたモノが
逆さまになることで
新しい時間を
数えていく

足元に積もる
大量の砂も
逆にすれば
新しい時を刻むのか

どうにもならないと
見捨てるだけだった過去が
次の月日を
創っていくなら
この瓶を
ひっくり返そう

空から
光る時間が降ってくる

内臓

感情のない
あなたの内臓には
どんな真実が
詰まっているの

今朝食べた米
すり潰された卵
消化され
排泄手前の血

あなたの年齢も
見た目も
その味には関係ない
内臓はしゃべれない
内臓に
言い訳はない

茶色と紫を
こねたような欠片に
悪意も自虐もない
あなたの真実を
大人になるにつれ
好きになった

その半生な
口で溶ける真実に
ときどき甘さを
見つけてみる

雨男

雨男は全身に
てるてる坊主をぶら下げ
丘の上に立っている

台風が直撃するのは
彼がその日
旅行を計画したからだ
自分のせいで
何千万人の
三連休が台無しになる

南の空を見つめ
目と目を合わせ
彼は対話をはかる
また子どもが一人
彼の洋服に
てるてる坊主を結んでいく

無邪気な願いが
彼を責める
降り始める雨粒が
大地も
彼の頬も
平等に叩き
いっそう彼を苦しめる

天気図を解説するだけで
予報士は
原因が彼にあるとは
ひと言も触れない
子どもたちは
不満を親に突きつけ
大人はみんな
諦めることを知っている

Appendix

プロフィール

山本

Author:山本
詩人の山本です。
言葉の楽しさ、言葉の芸術性、それを追求したものが詩だと思います。一般の読者に閉鎖的な作品ではなく、絵描きの絵の具、音楽家の音符、演奏家の楽器、写真家のカメラのように言葉を使い、読者に伝わる作品、読み手の背景で変わる風景を描いていきたいと思います。

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