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うたた寝

お隣の家の玄関先にはクロッカスが群れトカゲがあくびする天気の日は朝から蝶々を誘っているベランダには洗ったばかりの雲が並び開け放つ窓の奥からは孵化するカマキリたちの声が響く掃除機が吸っているのは日陰に残る雪だろうかカーテンの隙間からのぞく隣人の肩には新しい緑の苔が膨らんでいる宅配業者がブザーを押すとウグイスの音が住人を呼ぶドアは開くがその新しい顔をわたしはまだ知らないお隣さんとの境の塀の上を鳩の夫婦...

ビーツ

他人から頂く野菜には名札がついてなくスーパーに頼りきりのボクはぎこちない手触りでカノジョに声をかけるボルシチにいますよね?地中に潜れず横に肥大した大根のような身体にサツマイモの赤紫を羽織り異国の淑女はおしとやかだから会話を探そうとクックパッドで検索する酢漬けもよくありますよねポテサラに入ってるとピンクでオシャレなんですよボクの地元にピンクカレーってのがあってそれもアナタで色づけして――無農薬自家栽培...

フィギュアスケート

後ろ向きに滑りだす前向きな氷上の一週間始まりはマンデー・トウループ満員の山手スピン東京臨海高速鉄道りんかいラインのリンカイ・シークエンスで火曜日までつなげたらアクセルからの部長とループ水曜モーニングの着地が肝心同僚に差をつけたら思い切りサーズデー最高のサルコウ四回転そしてイナバウアー否バウアーもといバウアープレミアムフライデーは基礎点ゼロの政策だから往年の夜ふかしハナキンとりあえずビールdeイーグル...

誰がために雪は降る

雪原の真ん中で葉をすべて落とした大樹はフィギュアスケート選手のフィニッシュポーズのように千手を天へ捧げる降り注ぐ拍手の白称賛は筋肉の上で溶け固まりダイヤの歓喜を青天に叫ぶ冬毛に膨らむテンがインターホンに答えて顔を出す降り積もる小包は三日前に注文したもの中には子どもの頃母親が纏う同じ香水が入っている新曲は生みだされ一年で一番澄むホールに響く透明なパイプオルガンを抜けその下でうたた寝する命の子守唄を刻...

砂抜き

新米刑事が机を叩くとアサリたちはいっせいに口をつぐんでしまった私はカノジョたちの周りに43度の優しいお湯を注ぐ塩を溶かす故郷を思い出すだろう早く吐いちまいなそうすれば楽になるおっかさんも悲しんでいるぞ警戒しながら開く口からにゅっと舌を覗かせると一匹が蚊の鳴くような砂を吐くそれから?たたみかける新米にカノジョはびくっと舌を引っこめうつむいて黙り込むワタシたちは悪くない端のアサリが主張する責めているわ...

大杉漣

最寄りの駅の改札窓口で毎朝声掛けをしているのが大杉漣さんでした交番でポスターを貼っているのが漣さんで漣さんは工事現場で監督をしていました春が近づく小学校の花壇でひとり草取りをしているのが漣さんでスーパーでお客がクレームを言っていると対応に現れるマネージャーが大杉漣さんでした花嫁の父親が漣さんでした旅先で漣さんに道を教えてもらい相手先の上司が大杉漣さんで漣さんに恫喝され殴られました花見に出かける公園...

鳴き声

イヌの鳴き声はアハハだよという子どもにわたしの口は空気を舐めるワンワンじゃなくて?と聞き返すこと自体がその子の自由と自信を奪いそもそもわたしたちも誰にワンワンだとすりこまれたのだろう掘った芋いじるなだと言われればそう聞こえるWhat time is it now?のようにチュンチュンやパオーンピーポーピーポーが別の意味を持っている気がしてくる硬いものが割れてドカーンなんて単純すぎるパキミリズカドギババビブリドジャーミ...

明日は明日の風は来ん(来んウィズ・ザ・ウィンド)

スクランブル卵の休日のグッドアフタヌーン火曜日調子はピカソで青スカイに陽がシャインコーヒーを淹れるよブラック オア ミルクあってないようなチョイスとチャンス納豆は猫ねば声いただきみゃ~~お悩みのないカレンダーにアイ ハヴ ア今日しないといけないことマストなリストが完成したらラスト米粒イン ザ口プッチュアお手々トゥギャザーからの真摯なごちそうさま食器は洗わないよ待ってア モーメント夕飯は居酒屋だから...

愛チャリ

愛チャリが旅立った夜行バスで東京へ降り立ち暮らし始めるその日のお昼にはまたがっていた僕の五年間の愛チャリ真っ黒な汚れてさらに漆黒な僕の口数少ない愛チャリ一生一緒にいようそう告げた翌日前輪のリムが裂け剥がれブレーキかければバンバン弾け裂け目が引っ掛かり後ろには回らず僕たちの関係を知らない自転車屋は買い替えたほうがいいよと言い放つリムの交換に8千~1万円かごもボロボロだもんねぇこれ、付属のライトは点か...

腹痛

白い服の少女が腹の中で迷子になっている胃の中はもちろん肺や心臓の奥も探したけどお父さんもお母さんはしゃいでいた妹もいなくてもう一度戻ってくる時計塔の下の腹のベンチには知らない老夫婦が遠くを眺めている誰かを責めたいけど少女の年齢では両親を見失う自分の罪を知り舐めても舐めても止まらないささくれの血のように涙が痛みを伴ってくる雨上がりの空にはレモンスカッシュの光何事もなく目の前を過ぎる呼吸と鼓動たちの群...

Appendix

プロフィール

山本

Author:山本
詩人の山本です。
言葉の楽しさ、言葉の芸術性、それを追求したものが詩だと思います。一般の読者に閉鎖的な作品ではなく、絵描きの絵の具、音楽家の音符、演奏家の楽器、写真家のカメラのように言葉を使い、読者に伝わる作品、読み手の背景で変わる風景を描いていきたいと思います。

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